がけぷっち世界

ここはくまのおかしな世界です。

わたくそとクリスマス

みなさんは「なにがメリークリスマスだよ」と本気で口に出して言ったことがありますか?
わたくそはあります。
今でこそ、「リア充爆発しろ」だのなんだのと気軽に言えるような時代になったが、わたくその青年期はまだバブルの余熱が残っていたころ、「リア充」や「陰キャ」という言葉もなかったころのことである。

 

クリスマスイブに一人でいる、または一緒にいてくれる異性がいないということは、知られたら生きていけないくらい深刻なことであった。

高校生の時、クリスマスイブに行くところのないわたくそは、電車に乗って遠回りをしたり街をほっつき歩いたりしていた。立ち食いそばを食べるのも「あの人クリスマスの夜に一人で立ち食いそば食べてるわ」と言われそうで何も食べず。行くところがない、といいましたが、実は家では両親が待っているはずなのだが。でも両親とクリスマスパーティーをするのは嫌なので。毎年、クリスチャンでママさんコーラスに入っていた母がシャンパンで上機嫌になって「しゅうわっきっまっせぇり~」とクリスマスソングを披露するのが苦痛でした。両親が寝静まったであろう時間になって家に帰ると、両親は起きていて、テーブルには普段はないテーブルクロスが敷かれてチキンやクリスマスケーキが載っていて、クリスマスツリーが光っていた。深夜に帰ってきたことは咎めずに「メリークリスマス!」と迎えてくれた。わたくそは「なにがメリークリスマスだ!」と怒鳴ってテーブルクロスを引いた。食器が割れ、ケーキが飛び散った。この年以降、サンタさんは来なくなった。

 

数年後、わたくそは東京でアパートを借りて一人暮らしをはじめた。クリスマスイブはさらに地獄だった。一人暮らしの真っ暗い部屋で布団にもぐって震えていた。一人で部屋にいることがばれたくないので灯りもストーブも点けられなかったのである。それでもせめてクリスマス気分を味わいたくて、布団の中で固くなったチキンをかじった。おそろしく長い一夜だった。

 

歳を重ねて自意識過剰が和らいできて、クリスマスは(信者ではないけれども)一人でカトリック教会に行って過ごしたこともあり、また近年ではストリップ劇場で過ごしたりしています。メリークリスマス❕ ほっほっほ(←サンタの鳴き声)