がけぷっち世界

ここはくまのおかしな世界です。

玉が痛んだはなし

5年ほど前の冬、一度だけ泌尿器科に行った。

私はなにかと病気がちだったので、これで普通の総合病院にある全ての科にかかったことになる(産婦人科は赤ん坊の時をカウント)。病院のスタンプラリーがあったらコンプリートだ。

泌尿器科に行くことになったのは、金玉が痛くなったためだ。片方の金玉がズキズキして腫れているようだ。椅子に座っていると圧迫されてさらに痛む。「おっほっほ」と声が出てしまうほどの痛さだった。電車では大股開きで座り、混んで来たら立っていた。硬めのジーパンは履けなくなった。(ジーパンのことを最近のナウなヤングはデニムと言うね)

痛みが始まってから1週間くらい経っても治らないどころか酷くなってきた。お笑い芸人さんが睾丸の片方を摘出手術を受けたことを思い出した。自己判断では良くて精巣捻転、悪くて睾丸ガンを疑った。泌尿器科というのはとても行きたくはない科なのだが、意を決して病院の泌尿器科を訪れた。
泌尿器科の待合室にいるのは主に高齢男性だった。トイレに行くと小便器の手前がビショビショに汚れていた。

診察室に入ると短髪で格闘技経験がありそうな30代と思われる先生が座っていた。第一印象は少し怖かったが、口調は丁寧だった。症状を説明すると「じゃあね、脱いでください」と言った。わたくそがシャツを脱ぎかけると「下だけで」と言った。いつもと反対である。脱いで先生の前に立ち、裾の長いセーターを着ていたので自分でたくし上げた。先生は椅子を近づけ前のめりになってわたくその陰部をじっと見ていたが、いきなり陰茎をつまみ上げた。垂れ下がった陰茎がじゃまをして陰嚢の一部が隠れていたからであろう。見えない薄いゴム手袋をしていたと思うが、他人の指の感触を生々しく感じた。すぐに手を放しても垂れ下がらなくなった。そうして先生はしばらく金玉をそっと転がすように触って、「腫れてはいないようですが」と言った。
「じゃあね、もっとよく調べましょう。そこに寝て下さい」と言われベッドに寝かされ、いつのまにか陰嚢の裏まで見えるポーズをとっていた。その時は知らなかったが所謂カエルであった。先生が何と指示したのかは憶えていないが、まさか先生が「カエルで」とは言わなかったはずだ。二、三簡単に指示されただけで自然とそのようなポーズになっていたのだ。
生暖かいジェル状のものが塗られた器械が押しあてられた。。じわーっと暖かく、これもまた妙な感覚であった。エコーを撮っているのだった。冬場ということもあり縮こまった袋の皺を伸ばしたり押し広げたりしながら四方八方から金玉にエコーを押し当てた。
「うーん、とくに異常は見られませんね。痛みはどうですか?」と聞かれたので「そういえば、痛みが和らいでいるようです」と答えた。前日がピークで本当に和らいできていて、グリグリされても我慢できないほどの痛みはなかったのである。「じゃあ、しばらく様子を見て、ひどくなるようでしたらまた来てください」ということだった。

数日後には自然に治ってしまったのでその後泌尿器科には行っていない。いったいなぜあんなに痛かったのか原因不明のままであるが、その後も冬になるとあれほどではないが金玉がズキズキする日がある。

素人ながら仮説を立てると、わたくそは玉に対する袋の大きさに余裕が少なく、寒いと陰嚢が縮こまり玉を圧迫するのだろう。若い時は陰嚢に柔軟性があったので縮んでも問題がなかったのであろうが、40才を超えると柔軟性が失われ、縮むことでさらに固くなった陰嚢が睾丸を圧迫するのだろう。などと考えてみたが、しかしあの時あれほど痛んだのに泌尿器科に行ったとたんに痛みが引いたというのはたまたまだったとしか言いようがない。(あっ、ダジャレみたいになっちゃった💦)

 

ところでこの前わたくそは、この話を踊り子さんにペラペラと喋ってしまったのだった。貴重な時間でなんというくだらないことを…と後悔した。何か素敵な話をすればよかった。