がけぷっち世界

ここはくまのおかしな世界です。

同人誌を作って即売会に出てみた

今年はほとんどブログを更新しないで年末になってしまった。
今年、私の中での大きなできごとは、先月、11月20日文学フリマ東京35に出店したことだ。
自分で本を作って自分で頒布するのは初めてだった。

 

創造と表現の現場(ストリップ)を目の当たりにしていると、自分の中にもわずかながらにあった表現欲求が触発され、自分も何か作りたい・表現したいという気持ちが大きくなる。この気持ちは多くのスト客に理解してもらえると思う。

今年3月に「オジサンのためのストりっぷ劇場入門」という絵を描いてツイートした。表紙だけのネタであり、中身を書くつもりはなかった。

このツイートに予想以上の反響があった。「乗り掛かった舟だから同人誌作っちゃいなよ」と言ってくれる踊り子さんもいて、では一冊作って即売会に出ようと思うに至った。

漫画をツイッターやブログに上げて見てもらえば手間もかからずコストもほとんどかからないのだが、手触りのある紙の本として作り、それをお互い顔の見える形で直接渡したかった。と言えば聞こえはいいが、まあ、お店やさんごっこがしたくなったのだ。

じつは9月のコミティアにもエントリーしてスペースをいただいていたのだが、諸々の事情で不参加だったし、この時点では何も描いてはいなかった。
11月の文フリでもスペースをいただき(抽選はなく、エントリーした者は全員スペースがあてがわれたようだった)、ではいいよいよ描き始めなければと腰を上げたのは9月の末だった。
今年は概ね気分が沈んでおり、9月の末は特に酷かった中、漫画の始めとラストの1ページずつ描いた。何しろ漫画を描くのは初めてなもので、当初使おうと思っていたGペンでは全く思うように線が掛けず、サインペンに持ち替えてから作業が進みだした。この2ページは暗い雰囲気になった。
初めと終わりだけ描いて何だかもうほとんど完成したような気持になってしまい、中のページは気分が高まった時に一気に描けると思っていたが、そんな時は訪れず、それでもまあまあなんとかやる気の出てきた10月中旬になってから手を付けた。
おじさんを描くのは楽しいが、美少女は描けない。当初、構図の工夫で一切踊り子さんを描かなくても済むように目論んでいたが、そうもいかなくなってきた。だが、私にとっては女の子の顔を描くだけでも大変なのに、なにしろ踊り子さんは普通ではないポーズをとるのだから大変だ。アマゾンで買った可動フィギュア「チアキ」と、「まきばシステム」のお世話になってなんとか描いた。

次に困ったのは乳首を描くか否かであった。構図としては乳首を描いて当然なコマが複数ある。だが、「へー、くまさんってこういう乳首が好きなんだ」と思われるのではないかと考えてしまい、結局乳首を描くことはできなかった。

完全に一人で作っているので、催促されることもなく、作らなくても誰かに迷惑をかけるということもない。だから心が揺らいで、また不参加にしてしまおうと思ってペンが止まってしまうこともあった。日にちが迫ってきて、アイデアばかり湧いて作画が追い付かないので大幅にエピソードを削った。ツイートした「オジサンのためのストりっぷ劇場入門」に期待される内容とはだいぶ違うものになってしまった。


印刷と製本も自分で行った。パソコン用のプリンタで印刷し、ホチキスで中綴じした。

発行部数と金額(頒布価格)を自分で決められるのが同人誌のいい所なのだが、大変に悩んだ。
インタネットでYAH○○知恵袋などを見ると、「初参加で10冊売れれば御の字です」とか「大量に売れ残ると恥をかきますよ」とか、「1色コピー本で何百円も取るのは何様のつもりでしょうか。私ならタダにします」とか、厳しいことが書いてある。
それで「10冊作ります」とツイートしたらフォロワーさんが「10冊じゃ少なすぎる」などの反響をいただき、気をよくして結局30冊持って行った。この30冊とは別に、推しとお世話になった踊り子さんに差し上げる用と自分用に6冊作った。ページの割り付けを間違えるなどして印刷製本作業は当日の明け方まで続き、寝不足で文フリに行った。印刷製本がこれほどまで大変で時間がかかるとは思っていなかった。印刷製本を業者に任せた方が手間を含めたコストは安かったかもしれないが、寸前まで作業ができたのは完全に手製ならではのメリットだった。
出来上がった本を手にすると薄っぺらい。同人誌を「薄い本」と呼ぶが、それにしても薄すぎる。あと4ページ増やしたほうが体裁が良かった。(私の作り方だと1枚の紙に4ページ分割り付けるので、最低単位が4ページとなる。)
だが、やたらと長い解説でページを稼いで、これが限界だった。
「オッサンの落書きで金をとるのかよ」という声も頭の中に聞こえてきたが、頒布価格は寸前に150円に決めた。100円にすべきか悩んだが、50円分は私のプライドのようなものだ。

 

会場には10時45分に入った。ストリップ関連の皆さんが並んでいる通路とは一列ずれていたが、斜め後ろに皆さんの気配を感じられる場所だった。12時に一般入場者が入ってきて、13時には30冊売り切ってしまった。たぶん、適正部数は50冊というところだった。
お客さんの内訳は、『おじさんのためのストリップ劇場入門』なのに女性の方が少し多かった。ストリップに行ったことはないけど、私のツイートを見て買ってくれた方もいた。
試し読みをする方も多くて、みなさんきれいに読んでくれたので助かったが、次に参加する時には一冊サンプルを置くべきだと思った。
30分ほど自分のブースを空けて見たい・会いたいブースを見て回った。そして入手した本を自分のブースで読んでいた。完売していても来てくれて声をかけてくれる方もいてうれしかった。
17時に一般入場者が帰ると、主催者が放送で挨拶をして拍手が起こった。こういうのもいいものだと思った。
ひょんなことから同人誌即売会に出てみたが、なにしろひどい絵であり、時間に追われて雑になってしまった面もある。内容についても、ああすればよかった、あれは余計だったとくよくよしている。
しかし幸いにも耳に入る感想は身に余るものばかりであった。気が向いたらまた文フリに出店するかもしれない。そのときには今回売り切れた本を増刷するだろう。

それでは、よいお年を。