がけぷっち世界

ここはくまのおかしな世界です。

安倍首相の動画を見て思うこと

昨日(4月12日)、ツイッターに流れてきた動画を見て驚いた。安倍首相が優雅に犬を撫で、紅茶を飲み、読書をし、リモコンでテレビを操作している。星野源さんの歌とは何の関係もなく、初老のおじさんが無表情でくつろいでいるのである。一体何を見せたいのだろうか。「おじさんのくつろいでるとこ、見て。」なだろうか。
私は初め、何者か(安倍首相に批判的な者か、あるいはただの面白がりか)が作った動画を疑った。しかし首相のアカウントから投稿している、ということは、首相、アカウントを乗っ取られているぞ!と思った。

首相の動画を見る数日前に大泉洋さんと星野源さんのコラボ動画を見た。大泉洋さんは写った自分の寝癖を見てぶつぶつぼやいている。コラボになっていないが、「家でこれを歌ってるのを上げるの?どうやってみんな家で上げてんの?」とつぶやいている。その場で星野源さんの動画を流しながら撮っていることは想像できるし、本来コラボするものだということは分かっているはずだ。しかし安倍首相の動画は星野源さんの動画を見ているとは思えない。最後のテレビを見ているところで、星野源さんの動画を見ているのかと思いきや、チャンネルを切り替える素振りを(短時間に2度も)している。つまらないという感情しか伝わってこない。星野源さんの弾き語りに合わせてリズムをとるでもなく頭を動かすでもない。たぶん趣旨が分かっていない。(今ちょっと調べたら、岡崎体育さんと日村さんもコラボになっていない動画を上げているようだが、「あえて」であろう)

最初に首相動画を見た時に「これは怒らなきゃいけないやつだ」と理解しながらも、怒りよりもむしろおもしろくなってしまった。シュールなのだ。脈絡のないものを並べるという意味ではある種の現代美術のようでもあり、「舞台上のオーケストラとは無関係に」遠くで鳴らされる、マーラー交響曲第6番のカウベルのようでもある。

想像だが、これは昭恵婦人の発案だろう。「あなた、今こんなのが流行っているのよ。あなたのコラボなさいよ」と。そしてネットに詳しい広報担当を呼んで撮らせたのであろう。そして、誰も「今これを上げるのはやめましょう」と言う者がいなかった。もう周りにイエスマンしかいないのだろう。

おそろしいことにこの動画、中毒性が高い。決して「いいね!」は押さなかったが、「視聴回数」をやたらと増やしてしまった。そして繰り返し見ているうちに心境に変化が起きているのを感じた。いかんいかんと思いながら、写っている初老の男性にかすかではあるが親しみが湧いてきてしまったのだ。無表情だがその陰に孤独と苦悩が刻まれている。この男、みんなが言うほど悪い男ではないのではないか。そう思うと、星野源さんの奏でる素朴なメロディーと相まって、目頭が熱くなってしまった。
じつはそれが狙いで精巧に作られた動画なのかもしれない。