がけぷっち世界

ここはくまのおかしな世界です。

戦後74年の夏に思うこと

母は戦後生まれだが、夏になると戦争の話をよくする。
母がこどものころ、近くで花火大会が始まると飼っていた老犬が怖がって腰を抜かし、ヒィンヒィンと言いながら縁の下に隠れて、ドンというたびにヒィーンと言って震えてかわいそうだったという。「ペリーちゃん(犬の名)は戦争を経験したから、花火の音が爆弾の音に聞こえていたんだろう」と言った。

母の実家は東京の郊外にあり、焼失はしなかったものの屋根を突き破って座敷に焼夷弾が落ちてきて火をふいたり、近くに陸軍があったためにすぐ近くの道路に爆弾が落ちて大きな穴があいたりしたそうである。

 

私が子供のころ、戦後40年とか50年くらいだったが、兵隊に行った世代が元気で、お盆などで親類縁者が集まると戦争の話をしていた。近所で一緒の隊に入ったらしく、大陸に派遣されていたらしい。大きくて四角いクッキーの缶を開けると、隊の皆で撮った記念写真や、勲章などがでてきて、おじさんたちが間の周りに集まり、懐かしそうに話しだすのである。酒が入り、声が大きくなり、大きな身振りで「ババババ」「ズドドドド」と戦闘の様子を擬音多めで話す様はとても楽しそうだった。血湧き肉躍るという感じで興奮していた。敬礼を交わしたり、軍歌を歌ったりしていた。子どもの私はそんなおじさんたちが怖かった。今でいうと中年のオタクがガンダムの話に興じているのと変わらないテンションだった。
30年くらい前まではこんな光景は当たり前だったのではないだろうか。
親類の名誉のために言っておくと、普段は温和な人たちで学者や教員が多く、選挙では革新の側に票を投じていた人たちだった。たぶん、お酒の入っていない時に個別に「戦争はどうでしたか」と聞けば「辛かった」と答えたはずだ。と思いたい。
今、戦争の生き証人に「戦争とは」と聞くと、「絶対あってはならない」とか「みんなが不幸になる」と言うのは当たり前だ。戦争は絶対悪だという世論がようやく常識になったことと、今生き残っている人たちは兵隊に行ったとしても新入りでいい目を見ることがなかったことが影響していのだろうか。

親類の入った隊が、さほど過酷な境遇に陥ることはなかった(それでも数人戦死して遺影が飾ってあった)ということもあるが、なんだかんだいって男は戦争が好きだという面があるのだ。私もだ。そういうものだと思って気をつけているが、どう気をつければいいのかはわからない。